葬儀場をとりまく状況

 
 

1.頻発する葬儀場紛争
 街中を歩いていて、葬儀場建設反対ののぼりを目にされたことはおありでしょうか。現在、首都圏や関西の都市部を中心に葬儀場建設をめぐる紛争が頻発しています。大田区山王の葬儀場は、病院前に立地するのが問題とされテレビにも取り上げられました。→http://www.youtube.com/watch?v=iNS5RvXrUtE
 

2.葬儀場は嫌悪施設
 葬儀場はいわゆる嫌悪施設の代表例です。ひとつめの理由は、伝染病など様々な死因の遺体がお通夜であれば一晩安置されることから、衛生上の問題があるためです。
ふたつめの理由は、人の死に関する施設であることから、できるだけ自宅から遠くにあってほしいという気持ちが私たちに働くからです。
 20年以上前になりますが、内閣府が墓地に関する世論調査を行いました。それによれば葬儀場は火葬場に次いで、近所にできてほしくない施設No.2とされています。
http://www8.cao.go.jp/survey/h02/H02-07-02-07.html
 

 3.時代遅れの法律
 にもかかわらず葬儀場建設を規制する法律は、なんと存在しません※1。法律上、葬儀場は一部の住宅地域を除いてどこに作られてもよいことになっているのです※2。都市計画法に基づいた条例を整備すれば規制は可能ですが、そのような取り組みを行っている自治体はまだ数えるほどしかありません。

※1 葬儀場を除く、火葬場、墓地、納骨堂の立地は、「墓地、埋葬等に関する法律」により規制されている。葬儀場のみが規制されていない。これは墓埋法が作られた昭和23年には、自宅葬儀が普通だった為と考えられる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO048.html
※2 都市3法の一つ都市計画法において、葬儀場は集会場として扱われる。葬儀場は12ある用途地域のうち、第1種低層、第2種低層、第1種中高層を除く残りの9の地域で建設可能とされている。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/4570095.html
 

4.葬儀ビジネスに巻き込まれる住民
 高齢化社会が今後より本格的にやってくれば、葬儀の件数が増加していくのは明らかです。そこで葬儀業を有望とみたスーパーのイオンやコンビニのファミリーマートなど、異業種からの参入が相次いでいます。

 そのような中で危機感を募らせる既存の葬儀業者は、葬儀場を地元の便利な場所に作って少しでも多くのお客さんを今のうちに囲い込もうと躍起になっています。葬儀場建設に当たり葬儀業者が気にするのは会員獲得に結びつくような立地であるかどうかであり、近隣への配慮は二の次になりがちです。これがときとして閑静な住宅街の真ん中に葬儀場が突如作られる原因なのです。

 頻発する葬儀場紛争の背景には、厳しさを増す葬儀ビジネスを勝ち抜くために必死な葬儀業者の姿と、時代遅れの法律のために競争に巻き込まれる住民の姿とがあります。

 

 

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